ムカデ人間2

<あらすじ>

映画「ムカデ人間」の熱狂的なファンである主人公マーティンが、12人でつくるムカデ人間を実現するために頑張るよ!

 

<感想>印象に残った所を挙げます

 

1、怪優

まず、主人公の容姿に唖然!圧倒的存在感に終始釘づけです。

ヤバイ目、ヤバイ汗、ヤバイ腹、指を口に入れるな!寝グソするな!

チビデブハゲ不潔精神病という思いつく負の特徴を全て与えられたような主人公マーティンの、画面から漂ってくる臭さがたまらなかったです。

リアルでは電車にたまにそれ系の人がいるかなくらいで、お近づきになることはないだろう人物。

よく指を口に入れますが、ああきっとくっさいんだろうなぁと思いながら見ていました。

無表情であることが多いのですがガンガン目をトバしまくって、鋭い眼光が言葉よりも多くのことを語っています。

マーティンがチャーミングであることは間違いないです。知的さも感じます。

でも決して他人と心が交わることがないんだろうなと思います。

紙やすりでナニをしごくのは面白いなと思いました。

北村がいつまでもムカデ人間の人と言われるように、この方ローレンス・R・ハーヴェイさんもムカデ人間2のやべー人って永遠に言われ続けるでしょう。素晴らしい俳優さんです。

 

2.虐待と家族

マーティンの家庭環境はめちゃくちゃです。性的・精神的虐待を父から受けて父は服役中。母もマーティンの味方ではなくて、父親の不在をマーティンのせいと罵ります。(おそらく経済的な問題でしょうか、例えば父親は元教師だとかエリートだとかね※想像)

それに対してマーティンは何にも口答えしません。気まずそうな顔はします。

あの威圧感あるマーティンが、すでに殺しをやったマーティンが、ママの前では子供のように大人しいのがリアルで物悲しい反面、ちょっと笑えますね。

まぁあんな家庭で育ったら、誰だってマトモにはなりません。

マーティンがふっと湧いてでたモンスターではなく、家庭環境によって1から作られた人間であることが描かれていたのは個人的に大変興味深かったです。

 

・ママを殺すか、殺さないか

ママを殺すか殺さないか、どっちだ!? という場面がありました。

私は殺さないと踏んで見ていましたが、まさか殺してビックリしました。

他人は大量に誘拐するけど、母親だけは殺せない、なぜなら母親は自分の一部であるから、自分の世界を構成する1ピースであるから自分から世界は壊せない・・・などと思っていました・・・がハズれました。

マーティンにとって実は母親もどうでもいい他人の一人だったんでしょうか。

母親殺したあとに上階から騒音がなった時、マーティンの「あ、あいつゲットしよう」って顔は面白かったです。そして母親がやっていたようにほうきの柄で天井をつつくのです。あれが唯一マーティンに共感できた瞬間だったかもしれませんね。

 

3.妊婦

ムカデ人間の材料として妊婦が登場した時はビックリしました。オイオイそこ行くのかと・・・。

しかしラストはちゃんと妊婦ツエーになっててほっこり。

しかしアクセルと一緒に赤ちゃん踏みつぶすのは解せなかったですね。

バールも持ってないマーティンが車の窓を破ることなんてできないのに。

足でちょっと赤ちゃん避けて、アクセル踏めばいいじゃないですか・・・。

赤ん坊より自分の退避を優先させるっていうのは、監督が妊婦最強神話をぶちこわしたいとかそういうのがあったのでしょうか?

 

でも考えれば考えるほど、個人的にはあれでよかったと思います。

妊娠中の高いストレスは成長に必要なホルモンを抑制して、赤ちゃんの育ちを妨げ様々な障害のリスクを上げるそうです。もしあのまま生まれていても・・・。と、これは完全に行き過ぎた想像ですね。

 

4.前作の真ん中の子

前作は映画だったとして、真ん中の人を演じた女優をマーティンがオファーします。

のこのこついてくるアシュリン・イェニー演じるアシュリン・イェニー。

明らかに臭いキモブタ親父の怪しい車に乗り、途中逃げ出す努力もせず嘘のオーディション会場に入っていきます。

もうね、、、アホかと。アホの子かと。

いや可愛いですよ。いいと思いますよ。キャラとしては。

でもわざわざ前作を映画として、それと対比した現実の出来事を描くのに、この女優の無防備さはリアリティゼロ。

警察が全く働かない世界ですから、この世界の人はこんな感じなのでしょう。(投げやり)

まぁ警察については監督の皮肉なのかもしれませんね。

 

5.静かなる狂気に満ちたオチ

夢オチや逮捕される直前など色々な解釈はあると思いますが、個人的には妊婦家族を襲った後、12人揃えるため犠牲者を待っている画面に戻ったものだと思いました。

『この男は今から、私たちが今まで見てきたことをやります。こんな異常者がどこかの駐車場で、スーパーあるいは街角で、犠牲者を待っているかもしれません』

そういうリアルホラー演出だと感じました。

フィクションをリアルで再現してしまう男の恐怖、がテーマの一つだと思うので、シメもそのような感じなのかなと。

 

・夢オチでない理由

夢オチを否定する理由は、夢らしく荒唐無稽ではあるもののマーティンが見る夢としては想像力高すぎだからです。

マーティンは作中寝る時いつも幼い時の悪夢を見ます。ムカデ人間づくりが夢とすれば、恐怖の対象父親が一切出てこないというのはちょっと考えられないです。

それに抑圧されている人間が悲願の成就を夢見ることができるのか?っていうのも疑問です。

ムカデ人間を作る」のはある意味創造的で、根気のいる作業です。実際作る最中で細かな失敗を何度もしています。

もし、夢だとすれば自分が失敗する想定をするでしょうか?健常者ならともかく、あのマーティンが・・・?

マーティンが自分を客観的に見れているとは思えないし、夢だとすれば最初から前作のようなスーパードクター然としたマーティンで登場するでしょう。

それにムカデ人間の材料たちは、様々な動作や表情で感情表現をします。他人に全く興味のなさそうな、見知った医者より尻にウンコのついたままでムカデの世話を優先するようなマーティンが、数多い登場人物のそういった言動を夢で再現できるとは思えません。

 

 

<まとめ>

マーティンが可愛いから面白かったです。

しかし前作と比べると、前作の方が面白かったですね。警察が気持ちよく働いてくれるから。

今作ではムカデ人間そのものより、ムカデ人間を作る人間にスポットが当てられていました。

マーティンばかり目立って、12人のムカデ人間のほうはおざなりというのは、ムカデ人間2としてはどうなのでしょうね。

ホチキスとガムテとかその気になれば接合部分ちぎってでも抜けられるだろとか、全員が団結したらマーティンが喘息薬吸引中にでも割とすぐにやっつけられるだろうとか、いらんこと考えてしまうのは残念でしたね。