告白
<あらすじ>
授業中にも関わらず私語、いじめの横行するいかにも荒れたクラス。その中で教師(松たか子)が自分の娘を殺した者がこの中にいると告げます。犯人は誰か、なぜ殺人を犯したのかが解明され、教師は殺人に対する贖罪を当該生徒に求めます。
<感想>
1.冗長
最初の30分は面白かったです。松たか子の声が聞きやすいですね。非常に集中して見れました。
しかし、その後様々な登場人物の視点で「告白」が語られる中、どうも演出的にメタすぎるというのか、全てが別にいらない所まで詳しく告白されるのは見ていて冗長だと感じました。
登場人物の心情と言うのはにおわせるだけで十分楽しめると思うのです。しかし細かく丁寧に、「告白」されていく・・・・・・十分だよ。もういいよ蛇足だよと思いました。
2.犯罪者にざまぁみろという気持ち
主犯の少年の一人は恥ずかしいくらい重度の中二病だけどイケメンでした。もう一人は甘やかされた気弱なチビの陰キャ。
この二人が不幸になります。映画の流れ的には勝手に不幸になったといったところでしょうが、松たか子演じる教師・森口悠子は彼らが不幸になってゆく過程を超視点的に観察しています。
チビの陰キャ・下村直樹に関しては、殺人の罪関係なくそもそも家庭の問題が根深いというのがあって、罪に対する贖罪というよりは、放っておいてもこうなっていただろうな感はあります。引きこもりにありがちな、父の不在母の過干渉の家ですね。
こういう子が殺人を起こしたというのがむしろ意外で、なんかよく分かりませんでした。結局母親を殺しますが、この子にとって殺したいのは悠子の娘ではなく最初から母親(と父親?)だったのかもしれませんね。
一方中二病のイケメン・渡辺修哉に関しては、まぁどこまでこじらせればこうなるんだ・・・って感じですね。
ニヒルで無邪気、賢いけどバカ。中学生らしく幼稚。歯並びの悪い舌足らずな「ぼく」という一人称が非常にゾクゾクしました。「なーんてね」も寒すぎてゾクゾクできます。
この子も結局母親に捨てられた絶望が人生のほとんどを占めていて、父親の再婚で父にも捨てられ、でもそのことはむしろどうでもよくて、終始母親に固執しています。
人生で初めて感じた絶望の「ぱちん」という音が忘れられないんでしょうね。
それを取り戻すためだけに生きている感じがします。
修哉は最後にドカンと花火を打ち上げようと、大規模な殺人を計画します。多くの無差別殺人犯がやるような自殺としての殺人ですね。
もちろん悠子が事前に察知して阻止。自殺なんかで終わらせねぇよボウズって感じでラストを迎えます。修哉は色んな衝撃で鼻水垂らしながら嗚咽してます。犯罪者が不幸になってざまぁという、ここがこの映画一番のカタルシスでしょう。
でも悠子の思いが、修哉にどこまで分かるのでしょうね。
あなたの一番大切なものを、自業自得といった形で奪わせました。
そういった大人の悪意を、果たしてこの少年は更生につなげることができますかね?
退職した大人が長い間つきまとって中学生相手にやることがこれかと。逆手にとって被害者意識に浸ることもできます。僕は母親に捨てられたのにと。
更生というのは難しいですね。いくら罰を与えても命の教育を受けようとも、衝動でやっちゃう人間は止められませんからね。
修哉は絶望から殺人を犯すに至った。悠子もまた絶望からここまでのことをした。悲しいけどいつしか絶望が生きがいになっていくのです。悠子も逮捕されるでしょう。そのあと一体どうなっていくでしょうね。
3.唯一の救い
この作品に出てくる大人は変なやつばっかです。子供も変なのばっかです。
その中で唯一マトモっぽくて何より美女なのが橋本愛演じる北原美月。
クラス委員長をしており、先生と一緒に不登校の下村君のおうちに行ったり、個人的に修哉と親しくなったりします。
聖母ポジでしょうか。修哉を救えるのはこの子だけだった。
しかし心の幼い修哉にはこの手の女子はまだ早く(中学生なら当然といえば当然なのですが)、この思春期の女子にありがちな『本当のことを言う』性質を受け止められず、ガチギレして殺してしまいました。
修哉が母親を殺した時、感じたことが更生の始まりだみたいなことを悠子は言いましたが、修哉が美月を殺した瞬間更生の道は断たれたのではと思います。
悠子の娘は「どうでもいい他人」。殺すのもまぁ、分かります。いや、分かりませんが・・・まだね。
しかし最も自分に近い友好的な他者・・・どうでもよくない友人であり、この人から自分は世界に出ていくという人を殺した時、自分の中の野獣に打ち勝てなかった自分を知るでしょう。
賢い修哉はどこでも更生したふりはできるでしょう。すぐに模範囚なんて言われるでしょう。しかしこの時完全に、世の中とのつながりは断たれて永久に繋がらないと思いますね。
美月を殺すべきではなかった。(分かっていたなら、悠子は美月を守るべきだった)
それすらも失わせて更生の始まりというのであれば、まぁそういう考えの人もいるでしょうねって所ですが。
<まとめ>
この映画の監督が「下妻物語」「嫌われ松子の一生」を作った中島哲也監督だとは知りませんでした。
その二つは本当に大好きなので。
なぜ今作はこんなに冗長に思えるのでしょうかね。私にとって100分は長すぎました。
犯罪者の成育歴などは個人的に興味深いトピックなのでその点はとても面白かったです。